今回は指揮者であり、芸術監督も務める西本智実さんが手がけたバレエ「くるみ割り人形」の特集番組を観ました。
西本智実さんの作品が観たくなる
西本智実さんというのは、“イルミナート”というオーケストラ・バレエ・オペラ・合唱等で構成された団体で、ジャンルに囚われず、舞台芸術の可能性を広げ続けている方です。
紹介されていた内容としては、帝国ホテルの125周年の芸術祭で、ホールではない場所を舞台にして、そこで舞踏会を行うといったことや、ボレロの曲に合わせて日本舞踊をやるといったような、これだけでも西本智実さんの作品を観に行きたくなってしまいました。
西本智実さん・イルミナートが理念として掲げている言葉が『現状維持はすべての人にとって最大のリスク』。
これはその通りで、現状維持は衰退でしかないので、常に前に進んでいくことが大切ですね。
くるみ割り人形の新たな世界
本題の「くるみ割り人形」に話は進みます。
まずは「くるみ割り人形」が誕生した時代背景から。
フランス革命後の1804年にナポレオンが皇帝に即位します。
そんな時代にドイツのホフマンによって描かれたのが、「くるみ割り人形とねずみの王様」。
1892年フランス革命の余波はロシア全土を覆い、その時代を生きたチャイコフスキーがバレエ作品の「くるみ割り人形」を創りました。
そういった時代なので、表現に対する厳しい規制があって、革命家を彷彿させる人物はタブーだったため、ドロッセルマイヤーを本来描きたかった形では表現できなかったのではないかと分析されていました。
そのドロッセルマイヤーは現実世界と夢の世界の狭間をつなぐ重要な存在。
多くの「くるみ割り人形」の舞台ではねずみの王様をトゥシューズでやっつけて簡単にお菓子の世界に行けるのですが、原作ではそう簡単ではなかったようです。
そのあたりを踏まえ、西本智実さんは火の試練、水の試練、沈黙の試練という3つの試練を用意しました。
深夜に不思議な世界へと繋がる部分の演出にこの3つの試練が登場し、今まで観てきたくるみ割り人形とは全く別の世界を感じさせてくれました。
「舞台が終わっても、頭の中、心の中で続く舞台を作りたい」という西本智実さんの言葉が非常に印象的でした。